教室紹介

次なるパンデミックも見据えた感染症研究基盤の創生をめざして

2019年末に端を発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックに対し、本学は東京に立地する国立の医療系総合大学として、学長の強い危機意識とリーダーシップのもと、大学を挙げてCOVID-19の診療と研究に対峙してきました。

COVID-19への対応については、2023年5月5日のWHOによる緊急事態宣言の終了および本邦においては2023年5月8日から5類感染症への移行に伴い、大きな節目を迎えましたが、様々な要因により発生が予想される新興・再興感染症による次なるパンデミックの影が忍び寄りつつあることを認識しなければなりません。

日本におけるCOVID-19パンデミック対応において、その初期段階から効果的な感染拡大防止策を講じるための公衆衛生上の適切かつ迅速な意思決定に困難が生じた要因として、平時における病原体取扱施設の整備や高リスク病原体を取り扱うことが出来る専門人材の育成が十分に行われていなかったことが挙げられます。

本分野は、WHOによるCOVID-19パンデミック緊急事態宣言の終了および本邦での5類感染症への移行の節目を迎えたところで、今後のパンデミックに備えるべきハイリスク感染症への対応および感染症に強い組織づくりを見据えた基礎学術研究展開を行うため、2023年度に新たに設置されました。本分野は、ハイリスク病原体研究をより効果的かつ多角的に実施することをめざします。具体的には、①バイオセーフティレベル3(BSL3)施設を用いた高病原性病原体に特化した基礎学術研究 、②BSL3施設を最大限活用した学内外における感染症研究のマネジメント、③レベル3相当の病原体等の取扱いに精通し研究する人材の育成、の3項目を推進していきます。さらには、2023年11月に新たに設立された東京科学大学感染症センター(TCIDEA)の基礎医学部門における基幹分野として、未知の病原体を迅速かつ安全に捉え、速やかに検査法の確立、創薬及びワクチン開発につなげていく「100 days Mission」の達成だけでなく、社会全体における感染症危機管理対応能力の強化に貢献していきます。